2018年の夏の高校野球大会は、
大阪桐蔭高校の優勝で幕を閉じた。
その中で、今大会旋風を巻き起こした
金足農業高校のエースである吉田投手の
球数の多さが、議論を呼んでいる。
今大会、吉田投手は決勝戦の途中までを1人で
投げ抜き、5試合で計749球、1試合平均約150球
を投げた。
この吉田投手の姿に対して、
「1人の投手に投げさせ過ぎだ」
「将来の投手生命を台無しにしてしまう」
といった意見をよく見かける。
初めに断っておくと、私も吉田という
素晴らしい逸材を大事にすべきだと思っている。
一方で「すぐ決めつけてしまう」論調
については、論理的に一考したいと考え、
以下に取り上げてみる。
論理構造を整理する
まず今回の意見の論理展開を確認しておくと、
以下の様になる。
〇事象:吉田投手は多くの球数を投げている
〇前提:多くの球数を投げると肩が壊れる
〇〇⇒意見:吉田は肩が壊れる
これは論理展開における演繹法と呼ばれるアプローチだ。
前提を疑う
論理的であるために非常に大事なのは、
前提を疑う姿勢である。
ここで置かれた前提である、
「多くの球数を投げると肩がこわれる」
というのは、果たして本当なのだろうか?
安易な一般化を疑う
こういう疑いの意見を述べると、
「でも、●●選手が高校時代投げすぎて、
〇プロで活躍できなかったよね」
といった、少数事例での反論がよくなされる。
これは安易な一般化と呼ばれるものであり、
本来であれば、
〇・過去の高校生投手の球数
〇・その後、肩に負の影響が出たのか
をより多くのサンプル数で調べる必要がある。
別の因果を疑う
「球数の多さと肩の負傷しやすさ」
についての検証をするのが今回の目的ではないため、
ここではそれは下記サイトなどに譲るが、
〇球数制限は本当に有効なのか!?選手の身体を守るルール作りを!!
〇(中学校野球部!絶対に強くなるヒント集)
もし仮に、「球数の多さと肩の負傷しやすさ」
に因果関係があったとして、
次に、「他の因果が複合している可能性」
を押さえておく必要がある。
たとえば球数の多さだけでなく、
〇・投げ方やフォームが肩に良くない
〇・登板間隔が短い
〇・十分な肩のケアをしていない
といった、
別の要因で肩に負の影響を及ぼしている場合だ。
こういった別の因果を押さえずに、
「球数が多い事が問題だ」⇒「球数制限だ!」
と考えてしまうと、
では、
〇「球数制限してるので毎日投げていい?」
〇「球数制限してるので肩のケアはしないでいい?」
といった論点を誘発してしまう。
裏側・逆側を見ていく
こうした別の因果を見つけるにあたっては、
「AならばB」という因果関係において、
「AでないのにB」、「AだけどBでない」
といった、裏側・逆側を考えると、
ヒントが見つかりやすくなる。
今回の例で言えば、
〇・多くの球数を投げているが、肩が壊れてない例
〇・多くの球数を投げていないのに、肩が壊れている例
これらの事例について考える事で、
「別の要因があるのでは?」
を考えるヒントが得られる。
まとめ
我々は、特に「かわいそう」に代表される、
感情的な想いによって、意見の冷静さを失う事がある。
〇・まず自分が置いている前提を疑う
〇・少数事例を一般化していないか疑う
〇・別の因果を見落としてないか疑う
など、「本当か?」「他にはないか?」
といった、謙虚な姿勢を持つ事から、
論理的になるための第一歩が始まっていく