毎週末twitterで行っている「質問募集」に、先日、次の様な質問を頂いた。
いつも興味深く拝見しています。プレゼンへの質問です。ここ10年ほど分かりやすいプレゼンを心がけてきて、プレゼン中にうんうんと頷いて頂けるようになったのですが、笑いがとれません。笑いがあった方が、より印象深く内容を伝えられると思うのですが、どうしたら良いでしょうか?
— Jan Sanson (@jan_sanson) October 19, 2018
とても実践的で良い質問である。
この質問者が書かれている様に、プレゼンで笑いを取りたいと考える人は少なくない。
確かに、プレゼンをしていて聴衆が下を向いていたり、眠そうにしていたりすると、「こんな時に気の利いた笑いの1つでも入れられたらな・・・」と思う気持ちは非常によく分かる。
ただ、私は「プレゼンに笑いは必要ない」と考える。その理由を以下に述べていく。
プレゼンに笑いは不要!:その3つの理由
理由①:スベる
まず第一に、スベるリスク。
例えばプレゼンの冒頭で笑いを取ろうとして
「私、実は雨男で、今日も来るとき心配で地下鉄の中でも傘をさしてました!」
経験のある方は想像できると思うが、こういう状況になった後は頭が真っ白になって内容が飛んでしまったり、滑舌が突然悪くなったりして、プレゼンはほぼ機能しない。
理由②:聴いてくれなくなる
では、もし仮に笑いがズバッと決まったとしよう。
そうすると一部の聴衆は、その笑いに関連したテーマで隣同士で雑談をし始める。そしてその声が周囲に雑音となって響いてしまう。
そうすると雑談をしている当事者のみならず、その周りの方も話を集中して聴いてくれないという事が起こり、聴衆全体の話を聴く姿勢がそがれてしまう。
例えば、こんなイメージだ。
「私、実は雨男で、今日も来るとき心配で地下鉄の中でも傘をさしてました!」
〇「(笑)」
〇「地下鉄なのになんで(笑)」
〇「いや、地下鉄じゃなくても電車には屋根あるし」
〇「確かに(笑)結局傘いらんやん。」
〇「っていうか私も雨女でさー」
〇「え?そうなん?運動会とかいつも降ってた?」
〇「・・・」
理由③:話が頭に残らない
「今日はけっこう皆笑ってくれてたなー」
という時に限って、
「今日の話、いかがでした?」
と聞いてみると、多くの場合において、
「めちゃくちゃ面白かったです。地下鉄で傘さす話、今度私も使っていいですか?(笑)」
といった感想が出てくる。
その部分がプレゼン全体で伝えたい本筋と密接に関係するのであればよいが、そうでなければ元も子もない。
笑いの印象が強すぎるが故に、重要な部分が頭に残ってないというのは避けたいものだ。
大切なのは、聴衆を惹き付けること
「そもそもなぜ笑いを取りたいのか」を考えると、聴衆の耳を傾けさせたいのが目的のはずだ。そのためには、笑いの様なリスクのある手段を取らなくとも、いくつか方法がある。
親近感を持ってもらう
聴衆の耳を傾かせる方法の1つとして、話し手に親近感を持ってもらう事が挙げられる。
そのための方法としては、
〇・パーソナルエピソードを組み込む
〇・聴衆との共通点をネタにする
〇・失敗談を語る
等が実行しやすい。
笑いとは異なるアプローチだが、聴衆と距離を詰めるのに比較的使いやすいのでオススメだ。
話の内容自体に興味を持ってもらう
一番大事なのは、話自体が面白いことだ。
コミュニケーションの要諦をコンパクトにまとめた良書である「1分で話せ(伊藤 羊一著)」という著書の中でも、以下の様な記載がある。
特にプレゼンの場では、笑いはいりません。ビジネスで「おもしろい」のは、ロジックです。
突飛な方法に頼るのでなく、話自体を面白くするスキルこそ磨くべきだ。
当著書も参考に一読して欲しい。
まとめ
以上、「プレゼンに笑いは必要か?」について書いてみた。
まとめると、
・笑いには「スベる、聴いてくれない、頭に残らない」というリスクあり
・聴衆と親近感を築く事により、聴く姿勢を作る事も可能
・笑いよりも話の中身で勝負を
という点に集約される。
要は「funny」よりまず「intersting」で聴衆を惹き付ける事をオススメしたい。