論理思考の書籍を少しかじったビジネスパーソンや大学生が、
必ずといっていい程使う言葉がある。
「MECEが大事なので・・・」
実はこのMECEという言葉の乱用・一人歩きが、
思考に大きな弊害をもたらす事も少なくない。
本当の意味で、MECEの何が重要なのか、
ビジネススクールで論理思考を教える立場から、
その本質について記載していきたい
MECEとは
まずそもそもだが、MECEとは何か?について述べておこう。
MECEとは、
〇「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」
〇〇の頭文字を取った言葉で、訳すと「モレなくダブりなく」となる。
〇〇集合を分解して考える際に、意識しておきたい標語の様なものだ
MECEが大事な訳じゃない
ビジネスパーソンの中で、隙あらばMECEという言葉を使う人がいる。
新しい言葉を覚え、使ってみたい気持ちはとても分かるが、
MECEが大事な訳では全然ない。
むしろ上述した通り、
MECEという言葉の乱用・一人歩きが、
思考に大きな弊害をもたらす事も少なくない。
たとえばその弊害について、
いくつかを以下に挙げてみる。
パターン①:重箱の隅をつつく
MECE、特に「モレなく」を意識する余り、
さほど重要でないモレについていつまでも探す、
「重箱の隅をつつく / 粗探し」の姿勢を目にする事がある。
たとえば、
「コンビニの売上が落ちている。大きな要因を捉えたいので、
〇食品・飲料・本・文具に分けて考えてみると・・」
「ちょっと待って下さい。コンビニにはゴミ袋や洗剤も売っているので、
〇その分け方ではモレてますね。これ、MECEって言うんですよ」
という様な例だ。
そもそも「モレなく」を意識するべきなのは、
重要なモレを防ぎたいからであって、
99.9%を100%にしたいからではない
むしろこういう粗探し姿勢により、
時間が多くかかってしまったり、
周囲に辟易される事を認識せねばならない
パターン②:分けて満足
2つ目に「分けて満足」というパターンもある。
たとえば、コンビニの売上の分解として、
「対応した店員の身長別に
〇130cm台 / 140cm台 / 150cm台・・・200cm以上」
〇に分けました。10cm刻みなので、これでMECEですね」
と言って満足している様なイメージだ。
確かにMECEに分解は出来ているだろうが、
この分解は実務上ほぼ機能しない。
分解は、ただMECEに分ければ良い、という事ではない。
その時々の状況に応じて、どう分けると良いか、の切り口を考える事が重要だ。
たとえばコンビニの売上であれば、
「商品別」「時間帯別」「シーズン別」「棚の高さ別」・・・
などが選ばれやすい切り口であり、どれが良い切り口かを
データを見ながら多面的に確認する必要がある
パターン③:全体が見えてない
全体が見えてないまま、
分けて満足してしまっているパターンも多い。
たとえば、酒屋の売上の分解として、
「20代 / 30代 / 40代・・・
〇に分けました。10歳刻みなので、これでMECEですね」
と言って満足している様なイメージだ。
これだと「企業・法人」からの注文はカウントされない。
全体を「個人」という範囲でしか考えてない事に気づいていないが故に、
こういう事が起きてしまう
MECE症候群にぜひ伝えたいこと
新しいことを学んだ際には、
「その概念は何のために必要なのか?」
をぜひ考えてみると良い。
なぜMECEに考える事が必要なのかといえば、
「重要な見落としを防ぎ」、「効率的に検討を進める」
ためだ。
ここを度外視してMECEという言葉だけを乱用するから、おかしなことになる
まとめ
くれぐれも誤解して欲しくないのだが、
「MECEは重要でない」と言っているのではない。
「MECEこそが重要、MECEを知ってるからスゴイ」
と思っているなら、それは非常にまずいですよ、ということだ。
そして、
世の中の論理思考の本は、こういう部分が全く書かれず、
「MECEは論理思考の基本」などと1つの章を割いて述べているものが多い。
(そもそも筆者が本質に気づいてない事が多い様にも思える)
本当に論理思考について学びたければ、
良書を厳選して学んでいくことが大切だ。
(でないと、こういう弊害にあいやすい)
本当に良い思考の本については、私の方で厳選し、
twitterのフォロワー限定で紹介や要約の共有、質問の受付などを行っていくつもりなので、
ご関心のある方は是非フォローしておいて頂きたい