「話す時はまず結論から」
社会人になって、よく聞く言葉だろう。
例えば上司に報告や相談をする際に、皆さんもそういった指摘を受けた事があるのではないだろうか。
ビジネススクールの講師として、年間1.000名近くの方と論理思考やコミュニケーションについて討議するが、同様の考えをお持ちになっている方は結構たくさんおられる。
では、どんな時も結論から先に話すと良いのだろうか?
結論から先に話してみたけれど
例えば、次の2つの発言を比べてみよう。
〇「けっこう隅々まで探したんですけど、見つかりませんでした。」
〇「見つかりませんでした。けっこう隅々まで探したんですけど。」
次の例はどうだろう。
〇「私には少し辛めだったけど、とても美味しかったよ。」
〇「とても美味しかったよ。私には少し辛めだったけど。」
いずれも結論から先に話しているのは後者であるが、どの様な受け取り方の違いを感じただろうか。
コミュニケーションの感じ方は人それぞれなので一概には断定できないが、「後者にちょっとした感情的なしこり」を残す方も多いのではないだろうか。
相手に残る印象から考えてみる
コミュニケーションにおいては、最後の部分が相手の印象に強く残りやすい。
上記の後者の例だと、相手の心情に良い印象を残さない事も多い。
「とても美味しかったよ。私には少し辛めだったけど。」
〇〇→『文句言うなら食べるなよ・・』
となってしまうのは、コミュニケーションとしてもったいない。
コミュニケーションにおいては、聴き手にどんな印象を与えたいかを考え、話す順番を考えることが重要である。
では、「まず結論から話せ」は嘘なの?
では「まず結論から」とよく言われるのはなぜだろうか。
そもそも「まず結論から」が良しとされているのは、
〇・聴き手にスピーディに考えを伝えられる
〇・聴く順番として合理的である
といった、効率や合理性を重視したコミュニケーションの前提があるからだ。
一方で感情や心情を重視する様なコミュニケーションの場合には「まず結論から」は必ずしも当てはまらない。
例えばお客様から頂いたクレームへのお詫びのコミュニケーションで、
〇「結論から申し上げると、ご要望はお受けできません」
〇「その理由を3点で述べていきます」
という様なコミュニケーションをすれば、事態が収拾に向かわない事は明白である。
目的と状況に応じること
ここまで見てきた様に、何事も一律に当てはまる公式はない。
よく言われる「まず結論から」といった言葉においても、使う際にはその前提がある。
一概に整理はできないが、
〇ex):進捗報告、業務指示、伝達系のプレゼン
〇〇⇒自身の結論から
▼感情・心情を重視する場合
〇ex):交渉、相談、お詫び、お願い系のプレゼン
〇〇⇒特に最後をどう終えるか、から順番を組む
といったくらいのイメージを持ちつつ、後は自身でコミュニケーションの状況に応じて順番を工夫することをオススメしたい。