「良い説明」とはどういうものでしょうか。
仕事をしていると、色んな「説明」に出会います。いわゆる「セミナー」とか「説明会」といった場で、またそれに限らず上司に何かを教えてもらったり、メンバーから報告を受けるのも1つの「説明」です。
私の仕事である研修講師にとって「良い説明をする力」はとても重要です。このスキルがないと、なかなか良い講義にはなりません。講師業を続ける中で、また、講師の育成にも携わった経験の中で「良い説明とはどういうものだろうか」について考え続けてきました。
結論から言えば、「説明がうまい人」は「難しい・深いこと」を「分かりやすく」説明することができます。(下図・右上)
ただ、それ以外の象限の「説明」というのが世の中多く、それが我々を苦悩させることとなります。まず今回はそれ以外の象限について説明しながら、「良い説明の難しさ」について述べていこうと思います。
①簡単な話を、分かりやすく説明する
まず、そんなに難しくない「簡単なこと」を説明するときを考えましょう。
テーマがさほど難しくない場合においては、相手に伝えないといけない分量が少なくなります。
- 「なぜなら・・・」
- 「たとえば・・」
- 「補足すると・・・」
といった説明が不要になるためです。それによって、より「分かりやすく」説明することが容易になります。
まず1歩目として、「簡単なことを分かりやすく説明できる」という状態をしっかり目指したいところです。
このように書くと、
「そんなことできて当然でしょ」 「簡単な内容なら分かりやすく話せるよね」 「問題は難しい内容のときだよ」
と思われるかもしれません。
ただ、必ずしもそうでもありません。
②簡単な話を、分かりにくく説明する
意外に思われるかもしれないですが、「簡単な話を (びっくりするくらい) 分かりにくく説明される」時があります。
たとえば、
■横文字や略語を連発する
「ミーティングのリスケ先が全員マッチしないのでメンバー間でコンセンサス取った上で予定のチューニングしようと思います。」
とか、例えばこういったルー大柴も顔負けの横文字連発であったり。
他にも、社内でしか通じない用語を社外で連発する、であったり。
■不要な部分の尺が長い
「ダイレクトに言えば、『AとBとC』があったとして、Aの部分にフォーカスしたときに、まあ一言で言ってしまえば、BとかCとかそういうことじゃなくて、Aだけを考えて言い切ってしまう怖さもあるんだけど、そこはいったん考えずにストレートに言うと・・・」
みたいな、「いや、いつボール投げるねん」という、回り道が凄いパターンであったり。
■例え話のチョイスが下手すぎる
「我々の組織間でも、野球で例えるならアライバのような連係プレーが必要ですよね」
みたいな。「いやアライバって何?洗い場のこと?」といった反応しか得られないっていうものだったり。(※アライバについてはこちらを参照※wikipediaより)
このように、『敢えて難しく説明する』事象が起きてしまう、ということは世の中結構多いものです。その原因の1つとして、
「自分だけが分かってるワード、それで喋っている自分って凄い」
という悦に入ってしまっているケースが散見されます。
特に最後の例は、野球好き界隈は特に気を付けるように。(わしや・・・)
③難しい話を、分かりにくく説明する
今度は、話のテーマが「難しい、深い」とき。
この場合に話が分かりにくくなるのは「仕方ない」と思えますよね。
- 「なぜなら・・・」
- 「たとえば・・」
- 「補足すると・・・」
といった説明がどうしても多くなりますし、そもそも話す分量が多いと「分かりにくい」説明になりがちです。
また相手との「知識差」があったり、そのテーマを考える「枠組み・全体地図」を相手がまだ持ってなかったり。難しいテーマだと分かりにくくなる要因は色々挙げられます。
聞き手の時にこの状況で悩ましいこととして、「分かりにくいです」ということを言いずらい空気感があります。
- 相手が上位の人の場合が多く、そもそも言い出しづらい
- 自分の勉強不足が原因だと思ってしまう(知識差などは特に)
- 結果、なんとか理解しようと時間と労力を使ってしまう
ということが多いです。
ただ私は1人の話し手として、「難しい話が分かりづらくなるのは仕方ない」と極力思わないようにしています。
④難しい話だけど、分かりやすく説明する
つまりは、ここを目指して頑張っています。
難しい・深い話をするんだけど、相手にとって分かりやすく伝える。ここまでしっかりお読みいただいた方には、この象限の難しさが伝わっているのではないでしょうか。
伝える分量が多い中、いかに相手を混乱させずにしっかりと「分かってもらう」か。これは確かになかなか難しいことなんですが、講師業を極めるために目指している方向の1つです。
まとめ
今回の記事では、
- 簡単な話は、分かりやすく説明しやすい
- 簡単な話を、難しく説明してしまっていないか注意したい
- 難しい話を、分かりやすく説明できるかが勝負
といったことを書きました。
では④の象限のためにどんなことを意識すると良いのでしょうか。
これまで出会ってきた講師の諸先輩や、著名人の中でもロールモデルが何人かいて、その分析と試行を日々行っている中で、私が意識していることを次回書きたいと思います。
ぜひ皆さんも普段、「説明」で心がけておられることなど、考えてみてください。